タワーマンションの所有者にとって、地震は常に懸念の種です。

日本は地震多発国として知られており、高層建築物は特にその影響を受けやすいのが現実です。

この記事では、タワーマンションの地震に関する欠点と、それに対する具体的な対策を紹介します。

まずは地震のリスクについて理解することが重要です。

地震は予期せぬタイミングで発生し、その影響は建物の構造や地域によって異なります。

特にタワーマンションは、その高さから多くの挑戦に直面しています。

例えば、大きく揺れやすい、長周期地震動による共振のリスク、高階層住民の避難の困難さ、生活インフラへの影響、そして修繕費の高額化など、多岐にわたる問題が存在します。

これらのリスクを踏まえ、地震に強いタワーマンションを目指すための対策も同様に重要です。

防災用品の準備、地震時管制運転装置の設置、非常用エレベーターの設置、スプリンクラーや防火シャッターの設置、そして地震保険への加入など、様々な対策が考えられます。

これらの対策は、住民の安全を確保するだけでなく、建物の資産価値を守る上でも極めて重要です。

さらに、所有者が地震対策を講じるべき理由も明確にします。

日本の地震発生頻度の高さ、損壊による資産価値の下落、そして法的責任への対応など、所有者として無視できない要素があります。

この記事を通して、タワーマンションの所有者が地震のリスクを理解し、適切な対策を講じるための指針を提供することを目指します。

地震は予測不可能ですが、準備と対策は可能です。

賢明な所有者として、今日からできることを始めましょう。

井上 慎介

1973年生まれ 東京都出身

不動産歴27年

MUFG系総合不動産会社、外資系不動産ファンド会社を経て、1部上場不動産会社やIPO準備総合不動産会社など5社にて役員を歴任

その後、AXES株式会社を設立、累計100社超で顧問に就任

●保有資格

 宅地建物取引士

 不動産証券化協会認定マスター

 賃貸不動産経営管理士

 ビル経営管理士

 公認不動産コンサルティングマスター

 空き家相談士

1.タワーマンションの地震に関する5つの欠点

タワーマンションは、その魅力とともにいくつかの地震関連の欠点も抱えています。

これらの欠点を理解し、適切に対処することが、所有者にとって非常に重要です。

1-1.大きく揺れやすい

タワーマンションの最も顕著な欠点の一つは、その構造上、地震の際に大きく揺れやすいことです。

この特性は、高層建築物が風に対して柔軟である必要があるため生じます。

しかし、この柔軟性が地震の際には逆効果となり、低層建築物よりも大きな揺れを経験する可能性が高まります。

建築技術の進歩により、新しいタワーマンションでは地震に対する耐震性が向上しています。

しかし、それでも地震の際には不安を感じることは避けられません。

特に、上層階に住む住民は、地震時の揺れを強く感じることが一般的です。

1-2.長周期地震動と共振する可能性がある

タワーマンションは、長周期地震動と共振するリスクも抱えています。

長周期地震動は、遠方の大規模な地震によって引き起こされることが多く、地震波が長い距離を伝わることでその周期が伸びます。

この現象は、特に高層建築物に影響を与え、建物自体の固有周期と地震波の周期が一致すると共振が発生し、建物に大きなダメージを与える可能性があります。

共振による影響は、建物の構造に大きな負担をかけるだけでなく、住民の安全にも直接的な脅威をもたらします。

これを軽減するために、建築時には特別な設計が求められますが、完全にリスクを排除することは難しいのが現状です。

1-3.高階層住民はの場合停電でエレベーターが停止した際の避難が大変

地震が発生した際、タワーマンションでは停電が発生することがあります。

これにより、エレベーターが停止し、高階層に住む住民の避難が困難になることがあります。

特に、高齢者や身体の不自由な人が住む場合、この問題はより深刻です。

避難の際には、通常、階段を使用することになりますが、高層階からの避難は時間がかかり、体力的にも負担が大きいです。

また、非常階段が混雑することで避難自体が遅れるリスクもあります。

これらの問題に対処するため、タワーマンションの所有者や管理者は、非常時の避難計画を事前に策定し、住民に周知することが重要です。

非常用のバッテリーを備えたエレベーターや、非常時の避難サポートシステムの設置など、対策も検討されています。

1-4.水道など生活インフラへの悪影響が大きい

地震は、タワーマンションの水道や電気などの生活インフラにも大きな影響を与えることがあります。

特に、高層建築物では、これらのインフラの維持管理がより複雑で、地震による損傷の影響も大きくなります。

たとえば、水道管の破損は、住民の日常生活に直接的な影響を与えるだけでなく、建物の構造的な安全性にも関わる問題です。

地震によるインフラの損傷は、復旧までの時間も長くなる傾向にあります。

これは、高層建築物特有の設備や構造に特別な修復技術や部材が必要となるためです。

したがって、タワーマンションの所有者や管理者は、地震発生後の迅速な対応計画を事前に準備し、住民への影響を最小限に抑える努力が求められます。

さらに、地震による電力供給の中断は、セキュリティシステムや消防設備など、建物の安全に直結するシステムにも影響を及ぼします。

これらのシステムの機能が停止することは、住民の安全に直接的な脅威をもたらす可能性があります。

そのため、非常用電源の確保や緊急時の対応プランの策定が不可欠です。

1-5.修繕費が高額になりやすい

タワーマンションは、地震による損傷の修復に高額な費用がかかる傾向にあります。

これは、高層建築物特有の複雑な構造や、特殊な材料の使用によるものです。

特に、地震による構造的なダメージは、単なる外装の修復以上の技術的な対応を必要とし、それに伴い費用も増大します。

さらに、タワーマンションでは、住民の安全を確保するための設備やシステムの修復・強化も重要です。

これには、耐震性を高めるための構造改修や、非常時の機能を強化するための設備投資が含まれます。

これらの対策は、建物の安全性と長期的な価値を確保するためには必要不可欠ですが、その費用は決して軽視できるものではありません。

修繕費の高額化は、タワーマンションの所有者にとって大きな負担となります。

このため、定期的な建物のメンテナンスと、地震保険への加入など、財務的なリスク管理が非常に重要です。

建物の安全性を維持しながら、経済的な負担を適切に管理することが、タワーマンションの所有者に求められる賢明な対応と言えます。

2.タワーマンションの5つの地震対策

タワーマンションの所有者としては、地震に対してどのように備えるべきか、具体的な対策を理解することが重要です。

以下に、タワーマンションにおける地震対策の代表的な5つのアプローチを紹介します。

2-1.防災用品を備品として用意する

地震発生時に備えて、防災用品を適切に準備することは基本中の基本です。

この防災用品には、非常食、水、懐中電灯、ラジオ、救急キット、毛布、ポータブルトイレなどが含まれます。

特に、高層建築物の場合、地震発生後に一時的に建物から出られなくなる可能性があるため、これらの用品を各階に十分な量備えておくことが望ましいです。

また、非常時におけるコミュニケーションツールとして、無線機や携帯電話の充電器なども準備しておくとより安心です。

これらの用品は、定期的に点検し、必要に応じて交換・補充することが大切です。

住民に対しても、これらの防災用品の存在と利用方法を周知し、地震発生時の対応についての説明会を定期的に開催することも、効果的な対策となります。

2-2.地震時管制運転装置を設置する

タワーマンションのエレベーターには、地震時に自動的に最寄りの階に停止するように設計された「地震時管制運転装置」の設置が推奨されます。

この装置は、地震の揺れを感知すると、エレベーターを安全な階に誘導し、閉じ込めを防止します。

このシステムは、エレベーター内にいる人々の安全を確保する上で非常に重要です。

また、地震発生時のエレベーターの運行停止による影響を最小限に抑えるため、非常用の電源システムと組み合わせることも効果的です。

このような設備の導入は、建物の安全性を高めるだけでなく、住民の不安を軽減する上でも重要な役割を果たします。

2-3.非常用エレベーターを設置する

高層タワーマンションにおいては、非常用エレベーターの設置も重要な地震対策の一つです。

非常用エレベーターは、地震などの緊急時においても運行可能な設計が施されており、住民の迅速な避難や救急隊員の建物内への迅速なアクセスを可能にします。

このエレベーターは、通常のエレベーターシャフトとは別に設置され、耐震性が強化されています。

非常用エレベーターの設置には、高額なコストが伴いますが、住民の命を守るためには不可欠な投資です。

特に、高齢者や障害を持つ住民がいる場合、このような設備は、非常時の安全を確保する上で極めて重要になります。

また、このエレベーターの存在は、建物の安全性や信頼性を高める要素として、資産価値にも好影響を与える可能性があります。

2-4.スプリンクラーや防火シャッターを設置する

地震による火災は、高層建築物にとって大きなリスクの一つです。

このリスクに対処するために、スプリンクラーシステムや防火シャッターの設置が非常に重要になります。

スプリンクラーは、火災発生時に自動的に水を噴霧し、火災の拡大を防ぐ役割を果たします。

一方、防火シャッターは、火災が建物内に拡大するのを防ぐために、特定の区域を物理的に遮断します。

これらの設備は、住民の生命と財産を守るための基本的な安全対策であり、地震に伴う火災からの保護においては欠かせないものです。

スプリンクラーと防火シャッターの設置は、建築時やリノベーションの際に特に考慮されるべきです。

また、これらの設備の定期的なメンテナンスと機能の確認も、その効果を維持する上で非常に重要です。

2-5.地震保険に加入する

地震による損害は、時に予測不可能であり、その影響は計り知れないことがあります。

そのため、タワーマンションの所有者にとって、地震保険への加入は非常に重要なリスクマネジメントの一環です。

地震保険は、地震による建物の損傷や住民の財産損失をカバーし、経済的な損害を最小限に抑えることを目的としています。

地震保険の選択には、保険料のコスト、補償範囲、免責額など、様々な要因を検討する必要があります。

保険選びは複雑であるため、専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。

また、建物の耐震性や安全対策の状況によっては、保険料が割引される場合もありますので、これらの要素を事前に確認することも重要です。

地震保険に加入することで、万一の地震発生時における経済的なリスクを軽減することができます。

特に、タワーマンションのような高価な資産を保有している場合、保険への加入は財産保護の観点からも欠かせない選択肢と言えるでしょう。

3.所有者がタワーマンションの地震対策をしておくべき3つの理由

タワーマンションの所有者にとって、地震対策を行うことは、単に建物を守るだけでなく、様々な面でのリスクを軽減する上で非常に重要です。

以下に、地震対策を行うべき3つの主な理由を述べます。

3-1.日本は地震の発生頻度が高いため

日本は「火の国」とも呼ばれ、地震が頻繁に発生する地域に位置しています。

この地震多発地帯で生活する上で、地震対策は必須と言えます。

特に、タワーマンションのような高層建築物は、地震の影響を受けやすいため、地震対策の重要性は一層高まります。

地震の予測は困難であり、いつどのような規模の地震が発生するかは未知数です。

そのため、日常から万全の地震対策を行っておくことは、建物を守るだけでなく、住民の安全を確保する上でも極めて重要です。

3-2.損壊によって資産価値が大きく下落する恐れがあるため

タワーマンションは、その豪華さや利便性により高い資産価値を持っています。

しかし、地震による損壊が発生すると、その資産価値は著しく下落するリスクがあります。

建物の損傷だけでなく、安全性への不信感や住環境の悪化が原因となり、購入希望者やテナントの減少を招く可能性があります。

このため、地震対策をしっかりと行うことは、長期的な資産価値を維持する上で不可欠です。

また、万が一の地震による損害を最小限に抑えるためにも、事前の地震対策は極めて重要な投資と言えます。

3-3.法的責任を問われるリスクがあるため

タワーマンションの所有者としては、建物の安全性に関する法的責任を負っています。

地震による損傷や事故が発生した場合、十分な対策を講じていなかったことが原因と判断されれば、所有者は法的な責任を問われることがあります。

このようなリスクを避けるためにも、地震対策は必要不可欠です。

対策を講じることによって、万が一の事態が発生した際にも、所有者としての責任を果たしていることを示すことができます。

また、住民やテナントからの信頼を維持するためにも、安全対策への投資は非常に重要です。

以上の3点から、タワーマンションの所有者は、地震対策を十分に行うことが必要です。

これにより、住民の安全を守り、資産価値を保持し、法的なリスクを最小限に抑えることが可能になります。

4.まとめ

本記事を通じて、タワーマンションの地震に関する欠点と、それに対する対策の重要性について詳細に説明しました。

タワーマンションは、その高さと立地により、地震時に特有のリスクを抱えています。

これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることは、建物の安全性を確保し、住民の生命と財産を守るために不可欠です。

地震のリスクに対しては、大きく揺れやすい性質、長周期地震動との共振の可能性、高階層住民の避難の困難さ、水道などの生活インフラへの悪影響、修繕費の高額化など、様々な問題が存在します。

これらの問題への対応として、防災用品の準備、地震時管制運転装置の設置、非常用エレベーターの設置、スプリンクラーや防火シャッターの設置、地震保険への加入など、具体的な対策を実施することが求められます。

これらの対策は、日本の地震の発生頻度の高さ、損壊による資産価値の大幅な下落のリスク、法的責任を問われる可能性といった、所有者が直面するリスクを軽減する上で極めて重要です。

特に、タワーマンションのような大規模な資産を管理する上で、これらの対策は長期的な視点での投資として理解されるべきです。

最終的に、地震対策は単にリスクを回避するためだけではなく、住民の安心と信頼を獲得し、建物の価値を維持するためにも不可欠なものです。

タワーマンションの所有者としては、地震対策を継続的に見直し、最新の技術や情報を取り入れながら、その安全性を高めていくことが求められます。

地震は予測不可能な災害ですが、適切な対策を講じることで、その影響を最小限に抑えることが可能です。

タワーマンションの所有者として、今こそ、地震対策への意識を新たにし、賢明な行動を取るべき時です。

本記事が、皆様のマンション売却の参考となれば幸いです。